2022.08.10
放課後の価値(特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 平岩 国泰氏)
皆さんの小学生の放課後の思い出はなんでしょうか?
公園で遊んだ、いたずらをした、習い事をした、学童保育に通った、色々な思い出があると思います。放課後の思い出は世代や性別などによる違いも大きいです。昭和の小学生だった現在40代以上の世代は中心に「外遊び」があったように思います。平成以降の小学生である30代より若い世代からは「家で」「ゲームで」「習い事で」といった声が多く聞こえてきます。
昭和の放課後は確かに良かったかもしれません。しかし時計の針はもとには戻りませんので、この現代において何ができるのか?そもそも放課後の価値はなんだったのか?を考えてみたいと思います。
放課後の価値①
「放課後は長い」
皆さん、学校の時間、放課後の時間がどのくらいあるか考えたことがあるでしょうか?放課後を広くとらえ、放課後に夏休みなどの長期休みを加えると、以下のようになります。
(小学校低学年)
学校:年間1,200時間 : 放課後1,600時間
放課後や夏休みは学校より長いのです。学校には注目が集まり期待も大きいですが、学校はいまその期待が過剰となり苦しんでいます。学校が大切なことに変わりはないですが、1,600時間ある放課後も子どもの育ちに貢献できれば素晴らしいと思えませんか?
放課後の価値②
「自己肯定感」
自己肯定感という言葉をよく聞くようになりました。残念なことに日本の子どもの自己肯定感や幸福度は相当低いという結果があります。ユニセフの子どもの幸福度調査(2020年)では精神的幸福度は世界38か国中37位でした。
自己肯定感を支える大きな要素は「居場所」です。自分が行くと喜んでもらえる場所、安心できる場所、「自分はここにいていい」と思える居場所です。内閣府の調査では居場所が増えると、自己肯定感が右肩上がりに増えていくことが示されています。学校や家庭が居場所でない子もいます。放課後は子どもたちの安心できる居場所でありたいと強く願います。
自己肯定感を支えるもう1つの要素が「好きなこと」です。誰しも苦手なことを指摘されるのは辛いことです。一方で好きなことや得意なことは楽しいし、同じ仲間がいればなお嬉しくなります。放課後は、自分の好きなことを中心にできます。そして学校と違って人それぞれで良いのです。それぞれの子の好きや得意が見つかる時間にしていけば子どもたちの自己肯定感に貢献できます。私たちのアフタースクールではそういう姿がたくさん見られます。
放課後の価値③
「学校・家庭を支える」
放課後が学校・家庭を支えられる例を2つを挙げます。
1つ目は地域と子どもの接点です。放課後を入り口に、地域の人が子どもと顔見知りになったり、保護者同士が繋がったりすることで親子の関係人口を増やせます。
2つ目は困り感を抱えた子どものサポートです。例えば、学校が苦手になった子です。学校に通えなくなった子が私たちのアフタースクールだけ来るケースがあります。この場合、学校と親子の接点を保つセーフティネットとして機能して、親子のサポートができます。
ここまで放課後の価値を3つ書いてきました。そしてその根底に「学校と放課後が手を結ぶと子どもたちの育ちにもっと貢献できる」ということがあります。裏返して言うと「社会全体が学校だけに頼らないで放課後の力にも注目すると良い」ということでもあります。
VUCAの時代と言われるように、不確実でますます先の見えづらい世の中になっていきます。このような時代を生き抜いていく子どもたちは、学校でつける力だけではなく、学校外の放課後で培う力もきっと重要になります。そう考えると、放課後を学校と同じように大人が過ごし方を決めたり、全員一律の過ごし方を求めたりするのは極めてもったいないと言えます。
「学校は知識、放課後は知恵」と言われます。
多くの子どもが学校・放課後の両方で培った力で新しい時代を力強く生きていってほしいと願っています。