2022年3月28日、小倉將信衆議院議員の主催により、第6回「子どもの健全な成長のための外あそび推進に関する国会議員勉強会」が開催されました。第5回勉強会に引き続き、第二次政策提言の作成に向けて議論を進めている子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会のワーキンググループのうち、「公園利用の促進」「地域に根付いた意識改革(行政・地域住民)」「新たな外あそび環境の整備」の3グループが中間報告を行いました。また、本勉強会では、国土交通省からウォーカブルシティ(子ども目線のまちづくり)の取り組みについても、説明がありました。
本勉強会の副座長である、上野賢一郎衆議院議員による開会の挨拶のあと、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ビジョンケア カンパニー バイスプレジデントの森岡茂晃氏がワーキンググループの紹介を行いました。森岡氏は、「現在進行中の議論をしっかりとまとめ、実行していくことが重要だと考えており、一企業としても、日本社会に最大限貢献していきたい」と述べました。続いて、早稲田大学の前橋明教授から、本勉強会での報告の概要の説明がありました。
「公園利用の促進」のワーキンググループからは、多様化したニーズに対応した公園整備の必要性について、根っ子育てLink株式会社代表の阿部玲子氏、京都ノートルダム女子大学の石井浩子教授、そして植草学園短期大学の松原敬子教授より、発表が行われました。発表では、適切に整備・管理され、障害の有無に関わらず、あらゆる年齢の子どもたちがいっしょに遊べる公園環境を目指すべきであることが強調されました。そして、都市公園の中でも街区公園が、最も身近で安全なあそび場であるにもかかわらず、現状、安全衛生管理が十分でないことや、多様化する利用者ニーズに応えられていないため、利用が減少傾向にあることが、指摘されました。
街区公園の利用促進のために必要な対応として、年間維持管理費の拡充や人材育成による持続的な安全衛生管理、防犯対策の行き届いた公園を増やすこと、そして公園ルールの見直しや改正プロセスの迅速化の必要性があげられました。さらに、多様化する利用者ニーズに対応するため、年齢や性別、障害の有無を問わない運動遊具の設置、子どもへの外あそびの楽しさのアピールの必要性についても説明がありました。最後に、好事例として、箕面市の地域ニーズ・特性に応じて3つに分類した公園が挙げられ、児童・幼児に対するアンケート結果をもとに、人気の高い遊具を選定し、民間を活用して整備している様子が紹介されました。
続いて、「地域に根付いた意識改革」、「新たな外あそび環境の整備」ワーキンググループより、地域コミュニティの形成という観点から、公園以外の地域の新たなあそび場の整備の必要性について、好事例を交えた発表がありました。まず、谷口学園幼保連携型認定こども園文の里幼稚園の野村卓哉副園長より、地域住民における外あそびの重要性への理解不足から、子どもたちが公園でのびのびと遊べないなど、公園での高齢者の利用が優先されている状況があることについて、問題提起がありました。そうした現状を踏まえた国への要望として、①基本法、基本計画における外あそび推進の明記、②外あそび環境を積極的に整備する自治体への助成金付与、そして③大人との分断を解消するための地域コミュニケーションの軸となる新たなあそび場の確保が挙げられました。
③地域コミュニケーションの軸となる新たなあそび場の好事例として、ローカル フード サイクリング株式会社のたいら由以子代表取締役より、アメリカで発祥した、食、緑、地域コミュニティの拠点の役割を果たす、「コミュニティ・ガーデン」とその効能について紹介がありました。たいら氏は、「コミュニティ・ガーデン」について、探究心や自己肯定感につながり、地域コミュニティの関係改善、身体的および精神的な健康の改善、そして子どもの居場所づくりにもなると述べました。
続いて、一般社団法TOKYO PLAYの嶋村仁志代表理事より、TOKYO PLAYが実施している、住宅地の道路を、数時間、住民主導で歩行者天国として開放する、「みちあそび」の取り組みについて紹介がありました。嶋村氏は、「みちあそび」を通じて、子どもの存在が地域の中で可視化され、世代を超えてふれあうことにより、子どもたちは地域に見守られて育ち、自信もつき、周囲に配慮できる大人になることができると言及しました。
最後に「新たな外あそび環境の整備」ワーキンググループの座長である、公益社団法人MORIUMIUSの油井 元太郎フィールドディレクターが、ビデオメッセージを通じ、自然との分断やコミュニティの欠落の深刻化により、子どもたちが、生活の中で自然とのつながりを感じることができない状況や、家族や学校教員以外の大人との関係性が激減している現状を指摘しながら、テクノロジーと暮らしの便利さが進化する時代を生きる子どもたちが、生きる力を育みながら、心身ともに健やかに育ち、持続可能な社会をつくる一員となるきっかけを掴むために、大人の意識改革と子どものあそび場の整備が求められる、と述べ、ワーキンググループの発表を締めくくりました。
ワーキンググループによる発表後の意見交換では、上野議員より、たいら氏が紹介した、「コミュニティ・ガーデン」の取り組みについて、その普及にあたり、街区公園での実施など、既存施設を活用できると現実性が高まると意見がありました。田野瀬太道議員からは、政策提言の作成にあたり、国の予算獲得、インフラ整備など、大規模な対応が必要な取り組みと、「みちあそび」のように許認可の改善など、すぐに対応ができる可能性がある施策を有機的に組み合わせて要望するのは良い、との意見がありました。笹川博義議員は、公園利用について、維持管理費が高いために、遊具が撤去されていることも、公園の魅力が低下している一因であり、人が集う公園の要素などの見直しが必要であると述べました。田畑裕明総務副大臣は、街区公園の整備について、これまでは一人当たり緑地面積を尺度に進められてきたものの、時代の変化に伴い、今後はウェルビーイングの視点が重要になると言及しました。小倉將信議員からは、国政の場では地方の巻き込みも重要であるため、提言作成にあたっては、都市部の問題だけでなく、地方で必要な取り組みも検討してほしいとの意見がありました。
次に、小倉議員から、国土交通省に対して、国として、現代の公園に求められる機能の検討が行われているのか、また、公園の利用促進に関する好事例をまとめ、共有していく予定はあるかについて質問が投げかけられました。質問に対し、国土交通省は、平成29年の都市公園法改正から時間が経過しているが、今だに公園ルールが多すぎるという課題は存在し、今後どうしていくべきか、現在、検討中であると回答しました。その回答を受け、小倉議員は、ワーキンググループに対し、平成29年の都市公園法改正の内容を確認の上、現状とのギャップを検証し、今後の公園整備に求められている事項を提言に含めるよう、助言がありました。
最後に、国土交通省都市局まちづくり推進課より、子どもの視点に立ったウォーカブルなまちづくり(ウォーカブルシティ)の取り組みについて発表がありました。ウォーカブルシティは、まちなかに多くの人が集い、居心地良く歩きたくなる空間の創出を推進し、車中心から人中心の空間に転換を図る取り組みであり、来年度(令和4年)からは、「子ども・子育てまちなかウォーカブル」を重点テーマに据え、さらに取り組みを進めていくとの説明がありました。国土交通省からの説明をもって、第6回議員勉強会は幕を閉じました。
出席者
国会議員(順不同)
- 上野 賢一郎衆議院議員(副座長)
- 小倉 將信衆議院議員(事務局長)
- 笹川 博義自由民主党副幹事長
- 田畑 裕明総務副大臣
- 田野瀬 太道衆議院議員
省庁
- 内閣官房こども家庭庁設置法案等準備室
- 内閣府子ども・子育て本部
- 文部科学省
- スポーツ庁
- 国土交通省
- 厚生労働省
外あそび推進の会登壇者
- 早稲田大学 教授 前橋 明
- 京都ノートルダム女子大学 現代人間学部 こども教育学科 教授 石井 浩子
- 公益社団法人MORIUMIUS フィールドディレクター 油井 元太郎
- 植草学園短期大学こども未来学科 教授 松原 敬子
- 根っ子育てLink株式会社 代表 阿部 玲子
- 谷口学園幼保連携型認定こども園文の里幼稚園 副園長 野村 卓哉
- ローカル フード サイクリング株式会社 代表取締役 たいら 由以子
- 一般社団法人TOKYO PLAY 代表理事 嶋村 仁志